3. 演奏スタイルに関して
1) ダンパーは必要か?
ダンパーは弦をミュートして残響を消して打弦音を短くこもらせた音にする装置です。
ピアノのダンパーペダル(ラウドペダル、サスティニングペダルともいいます)が有名ですね。
ピアノの場合はペダルを踏まない状態で弦がミュート(ダンプ)されていて、踏むとミュートが解除されて音が伸びます。
ハンマーダルシマーの場合は、ピアノとは逆でペダルを踏まない状態で開放(音が伸びる)されていて、ペダルを踏むとミュートされます。
ハンマーダルシマーは本来ハンマーで叩いた弦の音が長く伸びるのが特徴ある音色をつくっている楽器で、通常はダンパーがピアノのように標準装備されているものではありません。
ダンパーを効果的に使っているハンマーダルシマー・プレーヤーとしてはケン・コロドナー: Ken Kolodnerやジョシュア・メシック:Joshua Messickの名が上がります。
彼らはハンマーダルシマー界のトッププレーヤーですので素晴らしい演奏でダンパーでの音色の変化を楽しめますが、誰もが彼らのように弾けるわけではありません。
そもそもダンプした音色はここぞというところで効果的に使うものです。
コンサートやライブで10曲演るとしても1,2曲に使うのがせいぜいでしょう。
使用頻度とその効果、重量の増加やダンパーフェルトの管理等の難点も考慮して、当初つけていたダンパーを外してしまった上級プレーヤーも何人かいます。
ダンパーフェルトのメインテナンス、スタンドとの相性、ダンパー紐の調整など微妙なところも多く、もしあなたがこれから初めてハンマーダルシマーを購入して始めるところであれば、決しておすすめのオプションではありません。
5年以上弾きこなした上で、ぜひ必要とお考えになった際に、楽器ごとグレードアップする際に検討されることをお勧めします。
まずはハンマーダルシマーをよく知り、弾きこなすことを目指しましょう。
ダンパーの取り付けは原則としてメーカー(ビルダー)で出荷前に行いますが、《Dusty Strings》の『D45』のみは後付でダンパーを取り付けすることが可能です。当工房でも承ります。
2020年には《Song of the Wood》でピアノと同様に常時ダンプされていて、ペダルを踏むと音が開放されるダンパーを開発したとのニュースがありました。
ご興味ある方はお問い合わせください。
2) スタンドについて~立奏か座奏か
ハンマーダルシマーの演奏姿勢は2種類あります。
椅子に座って演奏する座奏と立ったまま演奏する立奏です。
いずれの場合もハンマーダルシマーを置くスタンドが必要です。
小型のハンマーダルシマーの場合はテーブルの上において演奏することもできますが、あまり一般的ではありません。
ちなみにハンマーダルシマーの親戚筋、タイのキムは楽器を床に置き、奏者はあぐらをかいて演奏するスタイルもあります。
ハンマーダルシマーのスタンドは座奏用と立奏用に分かれています。
最も一般的なスタンドの形状は2本の棒をX字型に組み合わせて折り畳めるタイプです。
このタイプのスタンドは持ち運びにも便利です。
X字型のスタンドの他にも種々な形状があります。
座奏は楽器との距離がほぼ固定されます。
そのため、楽器との距離感がつかみ易い、長時間の演奏でも疲れにくいなどのメリットがあります。
立奏は楽器との距離を調整しやいことがメリットです。
4オクターブなどの大型の楽器は奥行きが深いので前後に体を動かすことで演奏しやすくなります。
他にもダンパーを使用する時に足裏に体重をかけて踏み込みやすいこと、ステージ映えがすることなどがあります。
米国メーカー製のハンマーダルシマースタンドはアメリカ人の標準的な身長を想定して設計されており、標準的日本人にとっては位置が高すぎることがあります。
メーカー純正のものを購入しなくても、国内で製作されたもので十分問題なく使えます。
当工房で製作しているスタンドは立奏用スタンドでもソフトケースに収納できる寸法で製作しています。
《Dusty Strings》の楽器とケースを元に設計していますので、他のメーカーの場合ケースに収納できるかどうか、個別に確認が必要になります。
(《Songbird》のソフトケースはスタンド収納の隙間がないので収納できません)
たまに座奏、立奏兼用スタンドというのもありますが、X字型の場合大が小を兼ねる寸法設計になるため、どうしても大型になりがちです。
結局のところ、座装用のスタンドと立奏用のスタンドはそれぞれ用意した方があらゆる機会に対応できます。
まずは当面どちらかの演奏スタイルをメインにするかを決め、それに合うスタンドを購入すると良いでしょう。
4. 購入の際に
1) 新品か中古か?
日本のハンマーダルシマー人口は多くなく、楽器自体の流通量も少ないため、ちょうどよい中古品をみつけるのはなかなか困難です。
オークションサイトやフリマサイトでのお買い得なハンマーダルシマーの出品はほとんどありません。
なぜか新品以上に高値で出品されているものもあるくらいです。
たまたま買いたいモデルで程度の良いものが見つかったらラッキー、という程度に考えておいた方がいいでしょう。
いつになるかわからなくても気長に待てるので、良い中古ハンマーダルシマーが欲しいということでしたら、当工房にご依頼ください。
ご希望に近いものが見つかった時に連絡差し上げます。
当工房は、主にアメリカの信頼できる小売店の中古ハンマーダルシマー入荷情報を随時チェックしており、程度の良い中古品が新品より2~3割安価にお譲りできることを目指しています。
新品と中古品の大きな違いはどこにあるでしょうか。
その一つはメーカー保証です。
中古品にはメーカー保証が付きませんので、万一不具合や初期不良がが出た場合でも有償修理になります。
また、弦にサビが出ている、あるいは修理すべき不具合が見られるような場合もあります。
もちろん当工房では問題点をご説明の上、どこまで最初に手を入れて整備するかご相談のうえ決定します。
中古品を探す場合は、新品より安く手に入れたいといった価格差を狙うより、特定の年代の木材の音色が欲しいなどの質的な理由を考えた方が良いでしょう。
価格はすべて相応であることをご理解ください。
非常に程度の良い中古はほとんど新品に近い価格になりますし、とても割安な中古には安いなりの理由(たいていは不具合)があります。
安心できるのはやはりメーカーがきちんと品質保証してくれる新品のハンマーダルシマーです。
2) ご予算
自動車で例えると、軽自動車とスポーツカーや超高級車、中古・新車で大きな価格差があるというのはもちろんご存知でしょう。
ハンマーダルシマーでも同様です。
予算はあるから良い楽器を買いたい、スタープレーヤーや先生と同じ楽器が欲しいというのは気持ちはわかります。
しかしながらより良い選択につながるのは、自分の気持ちと当面の目標をよく考えるということです。
ここをないがしろにしてハンマーダルシマーを買ってしまうと、理想と現実とのギャップに悩まされることになります。
最悪の場合ハンマーダルシマーを挫折してしまうことになりかねません。
それはとても残念なことですし、避けたいことです。
日本におけるハンマーダルシマーの新品価格レンジは3万円~130万円程度です。価格帯が幅広く楽器の選択肢が多いため、はたしてどの程度の予算でどんな楽器が買えるのか迷っておられることかと思います。
そこで、ずばり予算ごとのハンマーダルシマー購入ガイドをご説明します。
この購入ガイドでご紹介しているハンマーダルシマーはいずれも当工房にてお取り扱いしています。
在庫確認や、より詳しい仕様を確認したい場合はお気軽にお問い合わせください。
価格帯別一覧表はこちらをタップもしくはクリックしてご覧ください。
なお一覧表で紹介している価格は当工房にての概略価格、ケース付、税込・送料込です。
実際の販売価格等については個別にお問い合わせください。
輸入品のため、為替や国際輸送料金の変動、メーカーの価格改定などのため価格は常に変動します。近年コロナ禍の影響で人件費、材料費、送料等高騰しており各社ともかなりの値上げが続いています。
*価格帯別一覧表における弦構成について
ハンマーダルシマーには基本的に中央に位置している駒=ブリッジ(センターブリッジ)と右側に位置しているブリッジ(ベースブリッジ)があり、そのブリッジの上に弦が交差しています。
通常1コースは2本のユニゾン(同音)の弦が張られています。
このコースの数を分数の形式(例えば13/12)と表し、左側のセンターブリッジに13コース、右側のベースブリッジに12コースあることを表しています。
さらに低音や高音や特定の半音を付加するための追加ブリッジ(extra bridge)が付いている場合、先の分数に続けて14/13/8や16/15/3/2など追加されているブリッジの数を示します。
追加ブリッジの位置については各社各様の配置になっています。
この表記からどれが低音用か高音用か右側に付いているのか、左側についているのかまでといった細かい仕様は判定できませんが、概略の構成を理解するのには役立ちます。
各社それぞれ音の配置が異なりますし、キーによっても異なりますので厳密には言えませんが、12/11コースで2.5オクターブ程度、16/15コースで3オクターブ+α、19/18コースで4オクターブ程度の音域となります。
3) ハンマーダルシマーの購入
当工房、楽器工房ダルシクラフトでは30年以上に渡るハンマーダルシマー演奏活動に基づき、品質良好な楽器のみを販売しています。
工房内のショールームには《Dusty Strings》、《 Master Works》、《Songbird》の代表的なモデルを在庫していますので、来訪され実際に試してみることも可能です。
試奏した上で、同じメーカーの他のモデルを発注することも可能です。
現在はハンマーダルシマーを教えてくださる講師も全国に何人かいらっしゃいます。
当工房より講師の先生をご紹介することもできます。
先生に付いて楽器を始めることも可能ですが、ハンマーダルシマーはそもそもフォーク・インストルメンツ(伝統楽器)であり、先生につかないと習得できない楽器というわけではありません。
独習でも習得可能です。
今は動画サイトでいくらでも一流の演奏や本場のプレイを見聞きできます。
独習の環境はどんどん整ってきています。
現在国内でハンマーダルシマーを常時扱っているのは当工房含め数社ありますが、いきなり購入ボタンをクリックするのではなく気になることがあればまずはメールや電話で問い合わせて話を聞くと良いでしょう。
近年、日本国内でハンマーダルシマーを製作されるビルダーさんも何人か生まれてきました。
日本製にこだわりたい、製作者と直接お話したいというかたは日本のビルダーを訪ねる方法もあります。
ただ、まだ日本での生産台数はごく少数なため、これからが楽しみなところです。
楽器は長く付き合っていく相棒になります。
使っていくにつれ、不具合が起こったり、メンテナンスが必要になることが必ず起こります。
特に修理・メインテナンスについて、気軽に相談でき、必要に応じて修理も可能なところを選ばれるのがお薦めです。
なお、当工房は《Dusty Strings》《Master Works》《Songbird》《Song of the Wood》公認の正規代理店です。
《Dusty Strings》および《Master Works》の公認修理士にも認定されており、メーカーと緊密な連携をとった修理が可能となっております。
5. 最後に~あなたにとってのハンマーダルシマー の位置づけ
あなたはこれまでに何か楽器をやったことがありますか?
ほとんどすべての方は小中学生の音楽の時間にリコーダーとかはやったことがあるはずですが、自分の意思で何か楽器をやったことがありますか?
ピアノでもギターでも、あるいはサックスやヴァイオリンでも。
あるとしたらその演奏レベルはどのくらいでしょう?
耳コピができずに挫折したり、暗譜ができずに苦労した経験はあるでしょうか?
それとも今まで趣味で楽器をやったことはないのだけどもハンマーダルシマーの美しい音色に惹かれてやってみたいと思われましたか?
ハンマーダルシマーは民族楽器ですので、弾くのに楽譜が読める必要はありません。
楽譜が読めるとメロディを覚えるのに便利ではありますが、そもそも譜面を見ながら弦をハンマーで叩くのは非常に困難です。
ハンマーダルシマーを弾くのに必要なのは、「熱意と努力」です。
それと一般的には知られていない民族楽器ですので、その背景にある文化や伝統の音楽、楽器の作り手についても敬意を払いすこし興味を持っていただくとより良いと思います。
お問い合わせはこちらのリンクからお気軽にどうぞ