ハンマーダルシマーのチューニング。
言うのは簡単ですがこれが非常に難しい。
長年ハンマーダルシマーを演奏していても理想のチューニング方法が見つからないという方もいるくらいです。
それだけ難しいのですが、一方でプレイヤーの個性もチューニングに表れます。
非常に奥が深い世界です。
そこでダルシクラフト流ハンマーダルシマーのチューニング方法をご紹介します。
参考になれば幸いです。


チューニングの前に

ハンマーダルシマーのチューニングは一般的にA=440Hzで合わせます。
A=440Hzを基音といいます。

チューニングは遠慮せずに大きな音を出しながらやる必要があります。小さな音では正しくチューニングできません。
普段ハンマーダルシマーを演奏する時と同じ強さで弦を打つのがポイントです。

チューニングは電子チューナーを使うと便利です。
音の高低を目で確認することができるからです。
ただし、電子チューナーに頼りすぎるのはよくありません。
耳を澄まして音の変化を自分の耳で捉えるようにしましょう。
音をたくさん聞くと音の高低の具合を耳が敏感に把握できるようになります。
その結果耳が良くなり演奏の質が向上します。

【チューニング用の電子チューナーの例:上《Dusty Strings》『Dulci-Tune』 (約12,000円) 下《SEIKO》『 STH50』(約3,300円)】

いざチューニング

【ハンマーダルシマーのブリッジの位置と名称】

ハンマーダルシマーの弦は、同じ高さの音が2本で1セットとなっています。
ベースブリッジ(右側のブリッジ)、トレブルブリッジ(左側中央のブリッジ)ともにまず片方の弦を合わせ、続けて残りの弦を同じ音に合わるという手順を踏みます。
目指す音の高さより少し下げておき、上げながら正しい高さにチューニングします。
最初のうちは2本ともチューナーを使って構いませんが、慣れてきたら2本目を耳で聞いて合わせてみてください。

ベースブリッジは1本の弦で1つの音を鳴らすようになっています。
電子チューナーと耳を使ってチューニングしていけば問題ないでしょう。

トレブルブリッジは、ブリッジを挟んで弦の長さが左右が2:3、音の高さは完全5度違いの配列。
1本の弦で2つの音を鳴らすようになっています。
ブリッジの左右どちらかでチューニングすれば良いように思われるかもしれませんが、実際はチューニングピンから遠い方の音を合わせながら近い方の音も一緒に合わせていくことになります。
ブリッジの左右で弦のテンションが微妙に違い、片側の音をチューニングしても反対側の音がきちんと5度違いになるとは限らないからです。
そこでテンションの差によって生じる音程や響き方のズレをレンチの微妙な動きで調整します。
場合によっては弦を指で少し下に押したり、ブリッジ部分の弦を軽く持ち上げたりします。

全ての弦をチューニングしたら、次にハンマーダルシマー全体の音のバランスを確認しましょう。
ハンマーダルシマーはたくさんの弦が張ってあるため、チューニングしている最中もハンマーダルシマー内のテンションが変わり続けています。
最初に合わせた音がチューニングし終わった後ずれているということはよくあります。
同じ高さの音やオクターブ違いの音を同時に弾いたり、5度違いの音を順に弾いたりするなどして調整します。
できれば数曲弾きながら全体の音程を確認してください。

【チューニングに使うレンチ T型(左) L型(右)】

上の画像はチューニングに使うレンチです。
T型、L型とありますので、お好みで選んでください。
T型は写真のように片側にテープを巻いておくと、何度回したか判りやすくなります。


どの弦からチューニングを始めるか

ハンマーダルシマーのチューニングは上から順番、下から順番、中心部の音から始めて上下に広げていくといったやり方があります。
一概に「このやり方で」と言うことはできません。
好きなところからチューニングを始めて問題ありません。

ちなみにメーカーによってお勧めするスタート位置は違います。
《Master Works》はトレブルブリッジの一番上の弦から。
《Songbird》はトレブルブリッジの一番下から。
《Dusty Strings》は特に開始場所を指定していません。

メーカーはそれぞれ自社のハンマーダルシマーの特性を考慮したうえで「ここから始めましょう」と勧めています。
自分の楽器のメーカーが勧めているスタート地点がある場合は、そこから始めるのが良いでしょう。


チューニングのタイミング

ハンマーダルシマーは弾く度にチューニングをしなくても音程が安定しています。
演奏していてズレを感じたらその都度音を直すという程度で問題ありません。
長期間弾く機会がない場合は、定期的にチューニングしてください。
全体の弦の張力が崩れすぎると弦が切れたり、故障の原因になります。

コンサートやセッション、ワークショップに参加するなど楽器を移動した際は、30分~1時間程度新しい環境にしばらくなじませてからチューニングします。
温度・湿度が急激に変化した際には弦のテンションが変化するからです。
新しい環境に馴染む前にチューニングしてもどんどん音が変動してしまいます。


ハンマーダルシマーと他の楽器の音を合わせる

他の楽器と合奏する際に基音が上下することはあります。
可能な限り他の楽器の基音をハンマーダルシマーに合わせてもらうほうが現実的です。
ハンマーダルシマーは弦の数が多くチューニングを上下するには多大な時間がかかるからです。
チューニングに時間がかかりすぎると、それだけ演奏を楽しむ時間が減ってしまいます。
演奏時間を1秒でも増やすために、ここだけは出来るだけわがままになりましょう。


最後に

チューニングは慣れるまで時間がかかりますが、あまり正確性にこだわりすぎないように。
正確な音にこだわりすぎて演奏する時間が少なくなるのはもったいないです。
ハンマーダルシマーを楽しむ意欲と向上心があれば、すぐにチューニングの技術も上達します。
「習うより慣れろ」で自分に合ったチューニング方法を作り上げていき、ハンマーダルシマーの演奏を楽しむ時間を増やしましょう。


【参考】
ハンマーダルシマーの弦交換



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