いつも当工房(楽器工房ダルシクラフト)をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。最近、打弦楽器を取り巻くインターネット上の情報発信において、一部で極端な主張や、事実とは異なるジャンルの混同が見受けられ、当工房の元にも困惑や不安の声が寄せられています。ネット上の情報における公平性を保ち、皆様に安心して楽器を楽しんでいただくためにも、今回は「打弦楽器」という大きな括りの中にある決定的な文化の違いと、私たちが愛するハンマーダルシマーの本来の姿について、客観的な事実に基づき整理してお伝えしたいと思います。

1. 「ハンマーダルシマー」と「ツィンバロン」は全く異なる文化です

弦を叩いて音を出す構造から、これらは「打弦楽器」と総称されますが、その歴史的背景や音楽的ルーツは全く異なります。東欧のツィンバロン(クラシック)近代ハンガリーにおいて、楽譜の正確な再現や近代的なシステムへの改良を経て、主にオーケストラやクラシック音楽、宮廷音楽の文脈で発展してきました。国家的な資格(ディプロマ)や、アカデミックな評価軸を重視する文化を持っています。ハンマーダルシマー(フォークロア/オールド・タイム)1970年代以降、サム・リゼッタ(Sam Rizzetta)氏ら中興の祖によって米国で独自の発展を遂げました。アパラチア地方などの伝統的な民俗音楽、アメリカン・フォーク、オールド・タイム・ミュージックと深く結びついており、東欧のクラシック音楽やその権威主義からは一切の影響を受けていません。このように、構造が似ているからといって、一つの価値観や「正統性」をもう一方の業界にそのまま持ち込み、優劣を論じることは学術的・文化的に正しくありません。

2. アメリカン・フォークの伝統は「自由で開かれたもの」です

クラシック音楽が厳格なルールやアカデミズムを重んじるのに対し、アメリカン・フォークの世界は「人々の生活、対話、コミュニティでの共有」を何よりも大切にしています。楽譜が読めなくても、口伝や即興でセッションを楽しみ、誰もが自由に音楽の輪に加わることができる――これこそがハンマーダルシマーが持つ本来の魅力であり、誇るべき美しい伝統です。そこには、特定の学位や資格による序列、あるいは誰かを排除するような堅苦しいルールは存在しません。

3. 私たちが大切にしたいこと

現在、一部の発信によって、純粋に音楽活動やライブ、イベントを楽しみたい演奏家や愛好家、そして場所を提供するライブカフェの方々が萎縮してしまうような状況があることを大変心痛く思っております。音楽や楽器の普及において最も重要なのは、特定の「正しさ」を他者に押し付けることではなく、それぞれのジャンルが築いてきた歴史への敬意(リスペクト)と、多様性を認め合う寛容さです。当工房は、アメリカン・ルーツ・ミュージックが持つ「自由で温かいコミュニティ」をこれからも守り、皆様が安心してハンマーダルシマーの音色を楽しめるよう、微力ながらサポートを続けてまいります。ネット上の偏った情報に惑わされることなく、どうぞ皆様の自由な音楽を奏で続けてください。

今後とも楽器工房ダルシクラフトをよろしくお願い申し上げます。

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